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 こんにちは、株式会社アドライトの木村忠昭です。私たちはオープンイノベーションのマッチングから事業化まで一気通貫で支援のほか、新規事業の開発支援、国内外スタートアップの育成支援などを手がけています。

今回は国内の大学発ベンチャーについて触れてみようと思います。

 帝国データバンクが発表した「大学発ベンチャー企業の経営実態調査(2018年)」によると、2018年2月現在、大学発ベンチャー企業は1002社。2013年の調査開始以降初となる1000社を突破したとのこと。もっとも多いのは東京大学108社。ロボットや人工知能、ソフトウェアの開発や医療、ヘルスケアなどのサービス業が5割(508社)を占めることに。売上高も2327億1900万円で、過去10年間で最高を記録しています。こうした成長の背景には、政府の働きも一役買っています。ベンチャーキャピタルへの出資や「ベンチャー・チャレンジ2020」を展開し、ベンチャー、エコシステムの知の拠点として大学を位置づけ、産学連携やグローバル展開を見据えています。

日本発の幻の“大学発”電気自動車ベンチャー

 今ほど政府のサポートも手厚いとは言えなかった時代、大学発の技術をベースに大手企業とのオープンイノベーションを先進的に取り入れた大学発ベンチャーが存在します。

 2008年創業の株式会社SIM-Driveは、「インホイールモーター」という電気自動車に関する最先端の技術を活用した、慶應義塾大学発ベンチャーでした。今はアメリカだけでなく世界中から注目を集めるTesla社もまだ駆け出しの段階であり、日本発ということで世間の注目を浴びていました。

 当時、私は設立時の社外役員としてビジネスモデルの構築から事業立ち上げまで関与し、大学に帰属するライセンスの活用を含む国内外の企業との契約交渉、締結を社内メンバーと共に実行しました。加えて、社内の発明審査会議の一員として知財マネジメントにも深く関与し、大学発の技術やノウハウを活かしたイノベーション創造に向けて積極的に支援を行なっていました。

 SIM-Drive社では、大学で培われた技術を産業化するひとつの方法として、「オープンソース」という考え方に着目します。慶応義塾大学で研究開発されてきた、電気自動車に関する「インホイールモーター」というコア技術を広く外部の企業にも活用してもらおうという考え方です。

 同社の「先行開発車事業」と呼ばれる、電気自動車試作に関する1年間のオープンイノベーションプロジェクトに参画した企業は、一定の条件の下、自由にコア技術を活用した事業展開ができるようにしました。ちょうど世の中が化石燃料自動車から電気自動車へと産業が変革するタイミングだったこともあり、関連する多くの大手企業が次々と手を挙げてくださりました。最終的には何十社もの大手企業とのオープンイノベーションにより、技術を活用した電気自動車の試作車を何台も世に出していきました。

 このようなプロジェクト型までは成功でしたが、その先の量産フェーズで試練が待ちかまえていました。より深い関係値でのオープンイノベーションが必要となり、資金やノウハウも試作フェーズとは比べ物にならない莫大なものになりました。事業化するには、別次元の展開が求められることを肌身で実感しました。今ではいい教訓となっています。

 大学発に限らず、ベンチャーは時間が最も大切なリソースです。それをブリッジするリスクマネーや社内外でチャレンジする人材のネットワーク、ひいては本丸でのオープンイノベーションの仕組みが必要です。大手企業は自前主義から脱却することで、こうした社外の技術シーズとも連携したイノベーション創造が可能になります。

厳選!大学発ベンチャー3選

 大手企業とベンチャー(大学発含む)の連携が当たり前になる世界を目指していますが、「求めるようなベンチャーがいない」「どうやって開拓したらいいか分からない」という相談を受けます。そこで、ポテンシャルの高い大学発ベンチャー企業を3つPick upしてみました。

ドリコス

 健康経営にアプローチし、5種類のサプリメント(ビタミンB1、B2、B6、C、葉酸)から不足分を自動的に解析し調合するhealthserverの開発・製造を行なっています。調合までの流れもシンプル。healthserver本体に内蔵された生体センサーにタッチし、サプリメントの量や種類を決定します。スマホアプリ連携でさらに詳細に決められます。

 調合した栄養素は好きな飲み物に溶かして摂取できます。「平成26年度 国民健康・栄養調査」(厚生労働省)から、どの世代にも不足しがちなものかつ、過剰に摂取しても尿と一緒に排出される水溶性ビタミンを採用しています。法人展開を先行し、個人は2018年冬より提供予定です。

 過去、竹代表は弊社主催のオープンイノベーションをテーマしたイベントシリーズ「Mirai Salon」に登壇。大学発ベンチャーが大手企業と連携する際のポイントについてお話しいただきました。

本郷飛行機

 2015年12月、東大卒と東大現役生が立ち上げ。75gの小さなドローンによる自律飛行を世界ではじめて実現しています。人間とロボットの共生の文化を日本から発信していくために、「2つの目(カメラ)で見て」、「耳(マイク)で聴き」、「自ら考える」ドローンを開発。

 技術力と安全力がバチカン司教会から高く評価され、2018年3月には、ローマにあるサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂(四世紀創建)での祈りの様子を撮影することに。宇宙分野でのコラボレーションも展開したり等、幅広い分野で活躍中です。

Ventus

 共同創業者兼COOが現役の大学生。ブロックチェーンを活用したデジタルトレーディングカード取引システムを開発中です。顧客となるスポーツチームが発行するトレーディングカードから販売手数料、取引手数料を取るモデルを開発しており、プロダクト仕上げ中の段階真っ只中。ブロックチェーンエンジアを採用するなどメンバー構成にも力を入れています。

 彼らに共通しているのは、圧倒的技術力。大学で研究を重ねるなか、これって何かに応用できるんじゃないか? という発想や社会課題への強い想いから成り立っているとあり、大手企業から資金調達している企業も含まれています。

 世の中にないものを生み出そうとするベンチャー企業にリスクや小さな失敗はつきものです。明確な長期目標を共有したうえで期待値を醸成し、マイルストーンの積み上げをひとつひとつ示していく必要があります。短期的な視点に制約されずに仲間を巻き込んでいくと、上記のように資本市場を活用したファイナンスを含む大きな事業を展開することが可能になります。

 これからも世の中をアッと言わせる大学発ベンチャーが台頭するのを楽しみに、オープンイノベーション支援や新規事業開発に努めていきます。

ブロックチェーンや自律走行ドローンの大学発ベンチャーがアツい


(出典 news.nicovideo.jp)